乾いた音感のスパニッシュに少しの違和感を。
でも違う。
堀聡の音はぼくの耳に同化してしまった。
あまりにも自然に。
同じくブルースやパンクを経由し、
若い時代の放浪を得て、
時に職人としてアンティーク家具を修理したり、
あまりに自分と似た境遇の堀聡に出会ったのは10数年前の事。
青山のライブハウスで彼の音に出会った時、
ぼくはギターを手放そうかと思うほどに
嫉妬した。
20代で少し背伸びをした音楽をしていた
その頃のぼくにとっては、
その音があまりに自然で、
嘘偽りのない彼の日々を照らしているように思えたから。
これは彼自身のルーツミュージック。
それ以前から今日まで。
そしてこれからも続く日々の歌。
目を閉じてその音に耳をすます。
ほら。その旋律が産まれて
小さな芽から枝になり、
ゆっくりと時間をかけて幹になったのを感じれるはずだ。
彼は樹。
日々の音を紡いで、ゆっくりと連なり
形をなした、彼の幹を感じてほしい。
その樹の中に大きな水の流れがあって、
それは乾いたスパニッシュではなく、
ぼく等にとってきっと大事な音楽になる。
F.I.B JOURNAL
山崎円城 |